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毛糸屋の看板に入っている毛糸玉、その数は三百個

記憶の中の人や店や建造物/Inmemory> 尾道の日常遺産「毛糸看板」/KeitoyaNoKeitoKanban

尾道の日常遺産「毛糸看板」/KeitoyaNoKeitoKanban


尾道の日常遺産「毛糸看板」/KeitoyaNoKeitoKanban

失われた尾道の日常遺産


尾道の日常遺産にはいろいろあるが、これは発想そのものが面白く遊び心のあるもので、三軒屋町の吉源酒造場の銘柄「壽齢」の酒瓶の看板と同類のものだ。以下、40年も昔に書いた古い文章で申し訳ないが、掲載する。

尾道市の本通りにもユニークなデザインの看板に出会う。「毛糸」という文字のアクリルケースにカラフルな毛糸玉が入っているのだ。おまけに棒針もついている。ここは毛糸の専門店だ。昔から乳母車屋、万年筆屋、帽子屋など多くの専門店があったが、その専門店も数少なくなった。
実はこれ、創業が昭和二十年頃という「ひばり毛糸店」の看板だ。創業当時は(株)中国毛糸という卸業だったが、昭和二十八年に小売業になり、中国センイとひばり毛糸店の二店舗(隣同志)になった。この時に最初の看板ができたが、現在のものは、手編みが盛んになった十年前に毛糸と棒針を追加したという代物だ。
看板に入っている毛糸は純毛、アクリルなど、その数は三百個。この看板を見た旅行者、子供達はとても喜ぶそうだ。大笑いして通り過ぎたり、写真を撮らせて欲しいと言う人もいる。店内は開け広げた状態で、毛糸をはじめ、手編み・機械編みに必要な物は全て揃えてある。
客層は若い人から九十代のひとまでと幅広い。また、遠方の人には荷作りして出荷する。尾道は造船の町、中国、韓国、ロシアなどの船員さんがお土産にと安いモヘアや針などを求めてやってくる。
この店の二階は「ひばりスクール」という編物教室にもなっていて、OLや看護婦さんと生徒も多彩だ。クリスマス前、バレンタイン前は沢山の生徒さんが大集合。生徒さんや店員さんの作品が店内に展示販売されるのだ。ちなみに生徒さんが編んで余った毛糸も看板のケースに入っていて、必要になったので取り出して欲しいということもあるという。このお店、皆に「幸せのフク」を売る店のようだ。(1980年12月の原稿を2005年加筆修正)

残念ながら、2018年にこの看板は尾道の本通りから姿を消した。
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